獣道と谷底の川は
距離があるものの、
並行したような形に
なっている。
そして、
ソイツは谷底を歩きながら、
ずっと我々に付いてきていた。
「お~い、
こっちに来いよぉ~!」
谷底を歩く坊主頭の男は、
我々に叫んでいた。
ゲラゲラ笑いながら、
同じ台詞を
何度も繰り返している。
それだけでも
十分異様だったが、
その男の風体も奇妙だった。
着ているものが妙に古い。
時代劇で
農民が着ているような服だ。
顔は満面の笑顔。
だが、目の位置がおかしい。
頭も妙にボコボコしている。
そして、
結構な速度で移動している。
ゴツゴツした石や岩が
多い暗い谷底を、
ものともせず歩いている。
大体、
こんな暗くて距離もあるのに、
何故あそこまで
ハッキリ見えるんだろう?
と言うより、
白く光ってないか、あの人?