小学生の俺でも、
その異様さに気付き、
思わず足を止めてしまった。
「見るな、歩け!」
親父に一喝された。
その声で我に返る俺。
途端に、恐ろしくなった。
しかし恐がっても始まらない。
後はもう、
ひたすら歩くことだけに
集中した。
その間も谷底からは、
相変わらず
ゲラゲラ笑いながら
呼ぶ声がしていた。
気付けば、
俺と親父は獣道を出て、
車両が通れる程の
広い道に出ていた。
もう、
声は聞こえなくなっていた。
帰りの車中、
親父は例の男について
話してくれた。