通訳してくれた次男と長女。 | Love & Happy 恋人や家族大切な人と幸せに

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1歳半の長女が、突然泣き出した。

「カイチャン、ナイー。カイチャンハ?」
私は意味がわからない。

「かいちゃん?かいちゃんって、誰?」

長女はイヤイヤと首を振って、大声で泣きながら「カイチャン!」と地団駄を踏む。

すると、カードゲームで遊んでいた次男が立ち上がり、ソファの後ろに転がっていたうさぎのぬいぐるみを取り出して、

「これのことだよ」
と言った。

「え?これ?」

そういえば、長女のお気に入りのうさぎのぬいぐるみ、さっき掃除していたときにじゃまだからそのへんに放ったままだったっけ。

「どうしてうさぎがカイチャンなの?」
私は首を傾げた。

「うさぎだからでしょ。うさぎ、うかい、かいちゃん」

次男は何でわからないのと言うようにすらすら解説してくれた。

「すごいね。ゆうまは『ななえ語』の通訳みたいだね」
と、私が感心すると、次男は何も言わず嬉しそうに鼻の穴を膨らませた。

末っ子の長女が1才になる少し前に、隣の市に引っ越した。
すると保育園の空きがあったので、これ幸いと申込み、私は知り合いの事務所で週3日のパート仕事を始めた。

育児の大半は保育園任せで、だいぶ楽になったけれど、子供達と過ごす時間が一気に減った。

小学校に上がるまで幼稚園以外ずっと手元にいた長男と比べて、長女のことはわからないことが多かった。

そして、次男は3才から長女と一緒の保育園に通っていた。

そこは、マンションの一室を改装した少人数でアットホームの保育園だったから、ちょっと仕切りから覗けば0歳児から5歳児までいつでも顔を合わせることが出来た。
だから、次男は母親の私を差し置いて一年365日、24時間ほとんど全てを長女と一つ屋根の下で過ごしていたことになる。

長女は次男のことを「ちいにいちゃん」、と呼んで、いつもそばにいたがった。
休日、次男に家で長女の面倒を頼んで、地区の行事に小学生になった長男と参加していたら、
しばらくして近所の人が「おおい、あんなところに小さい子が歩いてるぞ」と言った。
びっくりして見てみると、マムシも出るという竹林の谷戸を、次男がまだ足元もおぼつかない長女の手を引いて歩いていた。

「なんで外になんか出たの!危ないじゃない!」と怒る私に、
「お散歩してたんだよ」と次男は自慢げに言った。

きっと、保育園と同じようにお散歩に行かなきゃと思ったのだろう。

ちゃんと長女の手を引いて、保育園の先生になったつもりだったのかもしれない。

次男は妹の面倒を見る。という責任を十分に果たそうと彼なりに考えての行動だったんだよね。きっと。
そう思ったら、それ以上怒れなくなってしまった。

やがて、次男が小学校に上がると、しばらく長女の体調が崩れた。

原因不明のじんましん。

小児科に連れて行くと、

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何か環境の変化はありませんでしたか?と聞かれた。

今までいつも一緒だった「ちいにいちゃん」が保育園にいなくなってしまったのが原因としか思えなかった。

次男が小柄だったせいかもしれないが、ある日バスに乗ったとき次男と長女が並んで座っていると、
そばの席の見知らぬおばあさんに「かわいいねえ。ふたごちゃんでしょ?」と声をかけられた。

ふたりはもちろん、私も一瞬ぽかんとしてしまった。ふたご?3才も違う、この兄妹が?

その時は単なる勘違いと思ったが、後で何かの時に二人の様子を少し離れたところから見ていて、もしかしたらと思ったことがある。

次男と長女は、動作や仕草が全く同じことがよくあった。手をつないで並んで歩いているときの足の運び、何かを集中してやっているときの手の動き、呼んで振り返ったときの表情・・・。

見知らぬ人なら「ふたごなのね」と思っても、不思議はなかったかもしれない。

小学生になったちいにいちゃんは、友達と遊びに行くことが多くなり、長女はお兄ちゃんとの遊びもだんだん離れていってた。
だが、時々長女はいっしょうけんめい次男のまねをしていることがあった。

トランプを何枚か適当に並べて、「・・・しょうかん。」「いけにえ・・・」と大まじめに一人でつぶやいているので、

「何をしてるの?」

と聞くと、当時次男が夢中になっていた「遊戯王」というカードゲームのまねをしているのだった。

日曜日に家に友達を呼んで遊んでいるのを、こっそり真剣に見ていたのだろう。
きっと、寂しかったんだよね。

いつの間にかけんかばっかりになり、今ではほとんど口も聞かなくなってしまった高校生の次男と中学生の長女だが、今は立場が逆転している。

いつもむすっとしていて、何を聞いても「あ」とか「う」としか聞こえない次男の返事に首をひねっている私に、
「明日お弁当いらないって」「もうやったよ、だってさ」と通訳してくれるのは、長女である。

引用元・画像:http://koarubiyori.jp/mama/taiken/3289

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