小学5年生の頃。
これは、一番恐ろしかった。
これ以上の体験は、
後にも先にも無い。
内容が内容だけに
信じてくれない人も居るが、
俺は確かに見た、
と思っている。
そして見たのは
俺一人じゃない。
親の後に付いて
山中の獣道を歩いてた。
季節は夏。
周囲は夕闇が迫って来ていた。
陸自空挺レンジャー出身の
親父が先導していたので、
疲れはしていたけど
恐怖は無かった。
頼れる親父であった。
聞こえる音といえば
二人の歩く音と
木々のざわめき、
種類は分からないが
鳥の鳴き声と、
谷を流れる川の音…
だけだと思っていた。
何か、
人の声が聞こえた気がした。
でも、特に川の音などは
人の声に聞こえる場合もある。
最初はそれだと思っていた。
けれども、