「猫は鰹節がすきやからなぁ、
きっと喜ぶわぁ」って、
その鰹粉を受け取った。
次の日から、
小さな陶器の器に
おばあちゃんが
鰹粉を入れて、
猫たちにやるようになった。
気がつけばおばあちゃんは
もう80を過ぎていて、
昔は自転車に乗って
買い物をしにいったり、
老人会の集いみたいなのに
出かけていたのに、
いつのまにかそれを
しなくなっていた。
毎日顔を合せているから
分からなかったが、
よく見れば
頬はこけ、
手には血管が浮いていた。
それでもおばあちゃんは、
毎日猫たちに
餌をやり続けた。
おばあちゃんが疲れて
布団から出てこないときは、
俺や母が餌をやった。
一昨年の夏、
俺が職場のゴミ出しに
外へ出ると、
おばちゃんが
『クロ』と呼んでいた猫が
ゴミ置き場にいた。