谷底の川で
何かが動いているのが見えた。
獣道から谷底までは
結構な距離がある上に、
木や草も多い。
そして夕闇が迫っているので、
何かが居たとしても
ハッキリ見える筈は無い。
ところが、ソイツは
ハッキリと見えた。
獣道と谷底の川は
距離があるものの、
並行したような形に
なっている。
そして、
ソイツは谷底を歩きながら、
ずっと我々に付いてきていた。
「お~い、
こっちに来いよぉ~!」
谷底を歩く坊主頭の男は、
我々に叫んでいた。
ゲラゲラ笑いながら、
同じ台詞を
何度も繰り返している。