『本当は絶対話すな
と言われてたんだが…
お前ももうすぐ親父になるし
話してもいいよな』
俺はすぐ
親父の話だと気付いた。
仁さんは全部を話してくれた。
まだ幼い俺をかばって
事故にあい
右腕を失ったこと…。
それが原因で大工を
辞めざるをえなかったこと…。
俺にばれないように
遠くから運動会を
見ていたこと…。
涙が止まらなかった。
悔しくて涙が止まらなかった。
俺は最後まで
親父に助けられっぱなし
だったんだ……。
その年の冬
無事に娘が生まれた。
名を佳乃(ヨシノ)とつけた 。
そして俺は今
仁さんの指導のもと、
怒鳴られながら
自分の家を建てている。
皆で一緒に住める
でっかい家を…。
未完成の家の庭には立派な
ソメイヨシノが立っている。
家が完成する頃には
綺麗な花を
咲かせてくれるだろう。