「すいません、すいません」
としか言えなかった。
上司に付き添われながら
戻る時、
ゴミ捨て場のほうを見ると、
クロはもうそこには
居なかった。
会社に電話が掛かってきて、
『祖母がタヒんだ』
という知らせを聞かされたのは、
すぐ後のことだった。
今でも俺んちは
暖かい日に猫が来て、
ひなたぼっこをしたり、
母に餌を
ねだったりしている。
俺はまだ
見た事がないのだけれど、
クロが時折背筋を伸ばし
縁側を見るのだそうだ。
そうした時
我が家では、
座布団とお茶とお菓子を
縁側に置くようにしている。